島田学長が平成29年年頭にあたり挨拶
平成29年1月4日(水)、甲府キャンパスにおいて(医学部キャンパス同時中継)、島田眞路学長が平成29年の年頭にあたり、役員?教職員を前に、挨拶を行いました。
挨拶の中で島田学長は、「丁酉(ひのととり)」にあたる今年は「伸び盛り」「成熟」「革命」の年であるとし、昨今の世界情勢などを交えつつ、厳しい環境に置かれている国立大学の現状を切実に語る一方、ケネディ元米国大統領の就任演説に準えて、「Ask not what your university can do for you, ask what you can do for your university」という表現で、各々が大学のために何を成すべきかを考えようと提起し、「この難局を皆さんの力をお借りし、ご理解を得ながら全学一丸となって乗り切り、将来を見据えた大学運営に努めたい」と決意を述べました。
挨拶全文
新年あけましておめでとうございます。
皆様におかれては、お健やかに新年をお迎えのこととお慶び申し上げます。
十干十二支(じっかんじゅうにし)によれば、今年は「丁酉(ひのととり)」の年です。十干は草木の成長に例えられ、丁(ひのと)は草木の形が充実した伸び盛りの状態で、十二支の酉(とり)は、草木の果実が成熟しきった状態を表していると言われています。本学もそのように成長したいと思っておりますが、実は前途多難です。
一方で酉年は、革命の年とも言われています。2017年、世界情勢は混沌としており、危機的な状況となる可能性は大いにあります。先ず、アメリカですが、昨年11月、アメリカ大統領選挙が行われ、ドナルド?トランプ氏が次期大統領に選出されたニュースが世界中を驚かせました。”Make America great again”というメッセージとともにアメリカ第一主義を掲げるトランプ氏の動向は最も注視しなければなりません。
1月20日、トランプ氏の大統領就任式は、イスラム、ヒスパニック、女性などに対する差別発言を行った大統領に対する大規模デモが予想され、多難な船出となります。クリミア半島侵攻やアレッポを制圧したシリア政府軍の後ろ盾となった拡張主義をめざすロシア、またEU離脱を決めた内向きのイギリス、フランスでは春に大統領選挙をひかえ、極右政党のルペン党首の選出が危惧されています。秋には、ドイツの総選挙ですが大量の難民を容認したメルケル首相が4選されるかは予断を許しません。アジアにおいては中国による南シナ海への海洋進出、軍事施設の建設や沖縄諸島への空母の航行、尖閣諸島の領有権を巡る問題など、大国の様々な動きの中、日本の安倍首相はオバマ大統領(真珠湾)をはじめ、トランプ次期大統領、プーチン大統領、習近平主席などと積極的な外交を展開しており、一定の成果はあげています。
また、ミャンマー、フィリピン、ウクライナなど新興国に対する1兆円以上の手厚い財政的支援を行っています。あたかも富裕な国家の如くです。しかしながら、我々にとって最大の問題は、国立大学に対して、財務省が文科省を通じて厳しい目を注ぎ、1000兆円の財政赤字を理由にすでに10年間10%削減を行い、これが主たる原因で、すべての国立大学では財政的環境好転の見通しが立ちません。今年度及び次年度はわれわれの努力で運営費交付金の1%削減を止めることができたものの、この大変厳しい状況は本学も当然例外ではなく、特に人件費増大を中心とする来年度予算は約2億円の赤字となります。この困難な状況について、これまでに各学域に出向きご説明をし、ご不明な点に対しては一つずつ真摯にご回答し、ご相談をしながら打開の道を探っているところであります。
各学域からは一様に「この厳しい状況はいつまで続くのか」と問われるのですが、国の施策が不透明な中にあり、明るい返答ができずにいることを心苦しくも感じております。言うまでもなく大学の使命の第一は研究、教育であります。加えて、地域への貢献も求められており、昨年はCOC事業及びCOC+事業に積極的に取り組むとともに、男女共同参画の加速を一層促進するため、理事及び監事に女性を登用、大村智先生のノーベル賞受賞を機に胸像の設置や、大村智記念基金奨学金授与なども行いました。Nature誌に本学の記事が掲載されましたことは特筆すべきかと思います。
アメリカ第35代大統領 故ジョン?F?ケネディ氏が1961年に行った就任演説の中に、「Ask not what your country can do for you, ask what you can do for your country(国があなたのために何をしてくれるのかを問うのではなく、あなたが国のために何を成すことができるのかを問うて欲しい。)」という名言がありますように、今、私はこれを「Ask not what your university can do for you, ask what you can do for your university」と言い換え、何とかこの難局を皆さんお一人おひとりの力をお借りし、ご理解を得ながら全学一丸となって乗り切り、将来を見据えた大学運営に努めて参りたいと思っております。
この新しい年がより充実した年になるよう心より祈念いたしまして、私からの年頭の挨拶とさせていただきます。
本年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。
平成29年1月4日
学長 島田 眞路